Project Story 003
大丸有エリアマネジメント
大丸有エリアを舞台に、
「人中心の空間」をつくりだす
Introduction
プロジェクトについて
大手町・丸の内・有楽町からなる「大丸有」エリアは、三菱地所のアイデンティティが深く根を下ろした空間だ。その歴史は明治期における丸の内に始まった。誰も価値を見出せなかった荒れ地に西洋式のオフィスビルを設け、日本の近代化を後押し。高度経済成長期に入ると開発が急加速し、やがて世界有数のビジネスセンターへと発展を遂げる。その過程で大手町や有楽町にも賑わいが広がり、経済的価値と文化的価値が共存するエリアが形づくられていった。
大丸有エリアのメインストリート・丸の内仲通りでは、エリアマネジメントの一環として、道路を「人中心の空間」として活用するチャレンジが進行中だ。とりわけ、公的空間を活用した実証実験「Marunouchi Street Park」は、国内外から熱い視線が注がれている。しかし、注目されるプロジェクトだからこそ、実現のハードルは高く、数えきれないほどの困難がつきまとう。それでもエリアマネジメント企画部の三木、内藤、猿橋は、一つひとつの課題と向き合いながら、挑戦を重ねてきた。その根底には、先達から受け継がれてきたまちづくりへの情熱が脈々と息づいている。
※当記事の情報は取材時(2024年12月)のものです。
Member Profiles
プロジェクトメンバー
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三木 彩恵子(みき さえこ)
2021年 キャリア採用
エリアマネジメント企画部 副主事前職は通信キャリア系のグループ会社で、通信設備に関わる建物維持管理、不動産開発に従事。建物単体ではなく「まち」に関心を抱き、三菱地所に入社。現在は丸の内仲通りを活用したプロジェクトに注力している。
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内藤 加奈子(ないとう かなこ)
2014年 新卒採用
エリアマネジメント企画部 副主事
兼 NPO法人 大丸有エリアマネジメント協会 事務局次長商業施設営業部やグループ会社への出向を経て、2022年よりエリアマネジメント企画部に転属。大丸有エリアマネジメント協会の中心人物の一人として、行政協議や地権者説明などを担当する。
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猿橋 拓己(さるはし たくみ)
2021年 新卒採用
エリアマネジメント企画部
兼 NPO法人 大丸有エリアマネジメント協会学生時代から丸の内仲通りの雰囲気に惹かれ、入社後は念願かなって大丸有エリアのマネジメントを手掛けることに。内藤と同じく、大丸有エリアマネジメント協会を兼務し、行政協議や企画、PRなどを担当する。
Flow
プロジェクトの流れ
〜Marunouchi Street Parkのケース〜

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01
- 企画
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実施時期の約半年前から準備がスタート。三菱地所とエリアマネジメント団体で丸の内仲通りの将来像を検討し、そこで挙がった意見を企画に落としこんでいく。
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02
- 行政協議・申請
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Marunouchi Street Parkは道路という公的空間を活用するために、行政や警察署、地権者などと協議を重ねる。
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03
- 実施準備
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行政協議を重ね、合意した内容の実施に向けて、行政申請やクリスマスマーケットの出店店舗との調整や設置什器の安全性確認など詳細な準備を進める。
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04
- 実施
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例年1ヵ月間ほど開催。イベントという側面で多くの人にお越しいただき、高いPR効果を生んでいる。また、道路空間を使った実証実験として各回で掲げる検証項目にもトライしており、将来目指す通りの実現を検討する。
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05
- 効果検証・振り返り
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各回のMarunouchi Street Park終了後は各ステークホルダーとも意見交換のうえ効果検証を行い、今後の施策に向けた示唆を得る。
Talk
プロジェクトメンバー対談
CHAPTER 001
大丸有エリアの価値をさらに高めるまちづくり
- エリアマネジメント企画部について教えてください。
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三木: エリアマネジメント企画部は、大丸有エリアの価値を高めるためのまちづくりを進めています。まちづくりには「ハード」と「ソフト」それぞれの側面がありますが、エリアマネジメント企画部はソフト面の取り組みが中心。「まちの価値向上」が大きなテーマとしてあって、地元の地権者や行政機関などと連携しながら、いろいろなプロジェクトが進行中です。
部は約60名の社員で構成されていて、それぞれの事業領域によってユニットを組んでいます。私と内藤、猿橋のユニットは主に丸の内仲通りのプロジェクトを担当しています。
猿橋: 私と内藤は、大丸有エリアマネジメント協会(通称:リガーレ)の協会員も兼務しています。リガーレは「公的空間活用」と「コミュニティ形成」を掲げるNPO法人で、他にも、大丸有まちづくり協議会やエコッツェリア協会などのエリアマネジメント団体と連携しています。
内藤: 各エリアマネジメント団体と三菱地所で大丸有エリアの将来像を検討して、それを実現するためのルールづくりを大丸有まちづくり協議会が担当。そして、リガーレが実行部隊となってプロジェクトを推し進めていく、というのが大まかな流れです。
三木: リガーレや大丸有まちづくり協議会からのご意見をまとめたり、施策のたたき台をつくったりするのは私の役目です。内藤・猿橋はリガーレに近い立場にありますが、私は三菱地所という立場から長期的なエリアマネジメントを意識することを心がけています。
- 丸の内仲通りでの代表的な取り組みについて教えてください。
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内藤: 例えば、リガーレと三菱地所が共催する「丸の内ラジオ体操」。2015年から続いている催しで、イベント期間中は毎週2回、丸の内二丁目ビル前でラジオ体操を行っています。通行人の飛び入り参加もOKで、毎回たくさんの人が集まりますよ。あとは、企業対抗の綱引き大会やリレーイベントも恒例行事になっていますね。
猿橋: 最近、力を注いでいるのが「Marunouchi Street Park」です。丸の内仲通りの車両交通を24時間規制したうえで、歩行者に開放し「公園」のように活用する実証実験で、2019年から年に2、3回実施しています。実験の狙いは、歩行者が快適に滞留・回遊できる空間、いわば「人中心の空間」をつくること。ストリートピアノを設置したり、キッチンカーを集めたり、通りに芝生を敷きつめたこともありました。近年は外部の企業さまとの連携やオリンピック、ラグビーワールドカップといったスポーツ分野との連携実績もあります。
三木: 丸の内仲通りはあくまでも公的空間なので、行政機関や警察との連携が不可欠です。民有地でのイベントとは異なり、多くのステークホルダーとの調整が必要となります。
猿橋: イベント期間中の数十日間、クルマの往来をシャットダウンするだけでも一苦労。一般の方が意識することはないと思いますが、実は結構すごいことをやってるんです。
CHAPTER 002
「巻き込み力」を駆使して、プロジェクトを突破する

- 丸の内仲通りのプロジェクトに関わるわけですから、
社内からの期待も伝わってくるのでは? -
三木: そうですね、とくに丸の内仲通りは大丸有エリアの象徴です。丸の内仲通りが2002年に整備改修され現在の姿に変わったことは、まちに対しても非常に大きなインパクトがありました。そのような背景もあり、社内でも思い入れの強い社員は多いと思います。
内藤: 三菱地所に入社したからには、一度は大丸有エリアを担当したいと思う社員も少なくないでしょうし、私自身も丸の内仲通りに関わる業務は初めてだったので、このプロジェクトに携わることに期待感がありました。
猿橋: でも、その分プレッシャーもありませんか?ヘタなことはできない、というか。
三木: たしかに、プロジェクトの良し悪しがそのままエリア全体の賑わいや来街者の数に響いてくると思います。
内藤: もちろん、責任の重さも感じています。最初は「これまで多くの先輩方が築き上げてきた歴史のあるとんでもないエリアを任されたのでは!?」って思ってました。まったく違う部署からの異動で事前知識もなく、まさに未知の領域に踏み込むような気持ちでした。
猿橋: 未知の領域と言えば、行政協議もそうですよね。ビジネスの折衝とは、異なるアプローチが必要です。協議させていただく相手方も各分野のプロフェッショナルですから、どのようにご提案したら、相手の理解が得られるのか。毎回、頭を捻っています。
内藤: ステークホルダーが多種多様だから、予期せぬ理由でプロジェクトが止まったり、議論が白紙になったりすることもあるしね。
三木: わかります。とあるプロジェクトがストップしてしまったときは関係各所に丁寧にヒアリングを重ねて、最善策を可能な限り用意しました。振り返ってみると話が想定内に進むことってほとんどなかったように思います。だから、万が一のときに備えて、いつもアプローチの仕方を複数パターン考えるように心がけています。
猿橋: あぁ、たしかに三木さんはいつも切り替えが早いですよね! プランAがダメでも、プランB、C、D……とたくさんアイデアが出てくる。
内藤: もう、いつも頭をフル回転させているような感じ。例えば、Marunouchi Street Parkは開催の約半年前から準備が始まります。会期にもよりますが、行政協議にかかる3ヵ月間を差し引いたら、実質、3ヵ月程度の準備期間しかありません。それに加えて、他のプロジェクトも同時進行させなきゃいけない。
猿橋: ですね、時間があっという間に過ぎていく。
内藤: そんな中で無数のタスクを整理し、着実に仕上げている三木さんに感心します。
三木: プロジェクトが実行できるのは、2人の「巻きこみ力」があってこそ。苦戦しそうなプロジェクトがあると、内藤や猿橋が「それなら〇〇部と組んだ方が良い」と、繋げてくれるのでいつも助かっています。こうした巻きこみ力は熱意の表われでもあると思っていて、リガーレでも発揮されているはず。って、本人たちを前にして言うのはかなり照れ臭いですね(笑)
PROJECT
PHOTO GALLERY


CHAPTER 003
エリアマネジメントの先駆者として、次なるステージへ
- Marunouchi Street Parkに関わる上でのやりがいを教えてください。
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三木: 丸の内仲通りは、大丸有エリアのメインストリートです。この通りで行われるプロジェクトはエリアのブランディングに直結してくると考えながら取り組んでいます。エリアの将来、歴史だけではなく、社会的にもインパクトがある取り組みに関われることが、大きなやりがいに繋がっています。
内藤: 手前味噌ですが、Marunouchi Street Parkをはじめ、丸の内仲通りでの取り組みはどれも先進的なものばかり。周囲から「エリアマネジメント業界のトップを走ってるよね」と言っていただける機会も少なくありません。国内外からの視察依頼も多く、業界内で注目されるのはプレッシャーでもあるけれど、活動する上での原動力になっています。
猿橋: 言われてみれば、視察多いですね。行政機関やエリマネ団体だけじゃなく、デベロッパーの方が訪れることも多いです。
内藤: 競合相手に手の内を明かすのは、営業部時代には絶対にありえないことだったから、この部署にきて驚きました。情報を出し惜しみしない姿勢は、これまでのメンバーから受け継がれてきたこと。大丸有エリアの取り組みが各地に広がって、ゆくゆくは全国のまちが盛り上がればいいという、エリアマネジメント業界を思う気持ちが根底にあるからだと思います。
猿橋: 実を言うと、入社して一番関わりたかったプロジェクトがMarunouchi Street Parkだったんです。丸の内仲通りはただ歩いているだけで心が軽くなって、ポジティブな感情が沸き上がってくる。そんな空間は他にないよな、って学生時代からずっとお気に入りの場所でした。
三木: なるほど、いわゆる「Walkable(ウォーカブル)な空間」を身をもって体験したわけですね。
猿橋: それから数年後、こうして丸の内仲通りのプロジェクトに関われるようになりました。学生の頃に感じたあの感動を多くの人に共有するつもりで業務に臨んでいます。
三木: 今の大丸有エリアがあるのは、諸先輩方の努力や苦労の積み重ねによるものです。代々受け継がれ、丁寧につくりあげられてきた空間が、今は私たちに託されている。守るべきものは守りながらも、大丸有エリアの価値をさらに高めるために何ができるのか、何が必要なのかを継続して考えていきたいです。
