INDEX
Project Story 002
(仮称)天神1ー7計画
よりよいまちづくりのために、
天神の過去と
未来を紡ぐプロジェクト
Introduction
プロジェクトについて
“九州一の商都”とも呼ばれる福岡県福岡市の天神エリアで、三菱地所がある再開発プロジェクトを進めている。福岡市による都市再開発誘導事業「天神ビッグバン」の一つである「(仮称)天神1-7計画」だ。三菱地所初となる単館商業ビル「イムズ」の跡地に、ホテルやオフィス、商業施設が一体となった複合施設を建設する計画で、新たな交流の循環が生まれ、豊かな文化・ライフスタイルを実現できるまちを目指す。
1989年に誕生したイムズは、時代の先を行く商業ビルだった。文化発信の場でもあり、福岡市民にとってはイムズに出かけることがちょっとしたステータスに。2021年8月31日の閉館日には、別れを惜しむように多くの人が詰めかけた。
思い出深いイムズの跡地をどう生まれ変わらせるのか――。福岡市民からの大きな期待を背負っているのが、九州支店・イムズ開発推進室のメンバーたち。イムズが紡いできた思い出や記憶を胸に秘めつつ、これからの天神をよりよいまちにすべく、2026年の竣工を目指して日々奮闘している。
※当記事の情報は取材時(2025年1月)のものです。
Member Profiles
プロジェクトメンバー
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尾見 惇(おみ じゅん)
2009年 新卒入社
九州支店 第1ユニット兼イムズ開発推進室 統括入社後、グループ会社に出向し新規物件を担当。2013年より東京駅前常盤橋プロジェクトに参画したのち、経理部に異動。2023年より九州支店配属となり、(仮称)天神1-7計画のプロジェクトマネジメントなどを担当する。
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小林 雄大(こばやし ゆうだい)
2022年 キャリア入社
九州支店 第1ユニット兼イムズ開発推進室 副主事前職は鉄道会社に所属し、沿線開発事業を中心に従事。三菱地所に入社早々、(仮称)天神1-7計画に参加。主な業務は商業およびオフィスの商品企画・リーシング、行政協議、ブランディングなど。
Flow
プロジェクトの流れ

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01
- 建替検討
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建物の構成や規模感を検討して、どういった物件に建て替えるか、スタディを行う。
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02
- 商品企画・設計・行政協議
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建替検討の結果をもとに、設計および行政協議を行い、建物計画の具体的な内容を詰めていく。
尾見 プロジェクトメンバーに加入
小林 プロジェクトメンバーに加入
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03
- 建設工事・リーシング
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工程やコストをマネジメントしながら建設工事を推進するとともに、賃貸床のリーシング(テナントの誘致)を行う。2024年5月15日、建物の新築工事が着工。これにともなってプロジェクト発表会も開かれた。
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04
- 竣工・開業
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竣工式典や開業販促を企画・実施するとともに、竣工後の運営計画を管理会社と立案する。2026年12月末の竣工に向けて、現在工事が進められている。
Talk
プロジェクトメンバー対談
CHAPTER 001
天神のランドマーク「イムズ」が残したもの
- (仮称)天神1-7計画に加入されたときの率直な気持ちを教えてください。
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小林: 正直、驚きましたね。入社して、初めてのプロジェクトが天神のランドマークであったイムズの再開発なんて。福岡に縁もゆかりもない私でも、世間からの注目をひしひしと感じました。「いきなり大型案件きたぞ!」って、鼻息荒く福岡に乗りこんだことを覚えています。
尾見: イムズって地元の人にとって特別な場所なんですよね。ただの商業施設ではなく、いろんな思い出が詰まっているんです。とくに40代、50代の方にとっては青春のシンボルみたいなものだから、話をふると思い出話が止まらなくて。
小林: そうそう、イムズでの思い出や惜しむ声などリアクションは様々で、大抵盛り上がります。だからこそ、今回のプロジェクトは「複合施設の開発」という小さな括りではなく、まち全体のこととして考えなくてはいけない。
それに、社内でもイムズの影響力ってすごく浸透していますね。「情報受発信基地」という時代を先行くコンセプトで、1989年の開業からただモノ(商品)を売るのではなくコト(体験)も提案していた。そのノウハウが丸の内エリアや横浜みなとみらいのまちづくりにも活かされているそうです。
CHAPTER 002
異例のプロジェクト発表会に込めた、まちづくりへの思い

- 2024年5月15日には、新築着工の記者会見を兼ねたプロジェクト発表会も開きましたね。
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尾見: 天神が福岡の中心地とはいえ、あれほど大がかりなプロジェクト発表会は、当社の事例をふりかえってもそう多くはありません。
小林: メディア関係者に加えて、天神のまちづくりに関わっている方などを70名ほど招待しました。ご臨席賜った高島宗一郎市長からも本プロジェクトに対する期待の声を頂戴し、身が引き締まる思いでした。

- プロジェクト発表会で一番伝えたかったことは?
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小林: 私たち、三菱地所の“あり方”です。一般的な記者会見なら、プロジェクトの概要を、文字通りメディアの方向けに発信することが多いです。しかし、今回はまちが生まれ変わり、天神の新たな1ピースとなるプロジェクト。私たちのまちづくりへの思いを天神に関わる方々に伝えることが大切だと考えました。
尾見: コンセプトの「福岡文化生態系~福岡のあたらしい文化を共に創造し続ける~」にある「文化」という言葉は様々な意味を持っていますが、私たちは「世の中が開けて生活内容が高まること」だと捉えています。開発室のメンバーは東京から福岡に赴任していますが、それぞれが一福岡市民として福岡・天神を思い、「まちづくり」に参加しています。
小林: そうですね、当社のブランドスローガンは「人を、想う力。街を、想う力。」。会見では弊社社長の中島篤がスピーチを行うことで、社としての姿勢を示しました。
尾見: まちづくりの話で言うと、福岡でも「三菱地所=丸の内」というイメージが根づいているように感じます。けれども、福岡に東京の事例をそのまま持ち込めばいい訳ではない。その地域の気質や“生態系”を意識しなくてはなりません。そういう意味では、福岡の方々に試されている感覚もあるんですよ。「東京の会社が天神をどう変えるの?」って。
小林: プロジェクトに加入し、発表会を開くまでの1年半が、人生で一番「まちづくり」という言葉と対峙した気がします。発表会に至るまでの過程で、建物のコンセプトや提供できる価値をさらに練り上げ、どのように発表会でアウトプットすれば当社の姿勢を効果的に示すことができるか、検討を重ねました。その苦労があったので、無事にプロジェクト発表会を完遂できたときは大きな達成感がありました。
尾見: いやぁ、それにしても長い道のりだった……。発表会を終えて、記者や来場者の方からプロジェクトに期待する声やまちづくりの方向性に対する一定の共感はいただけたので、「自分たちのやってきたことは間違っていなかった」と、手応えは掴めました。
PROJECT
PHOTO GALLERY


CHAPTER 003
年齢や役職の壁を超えて、本音と本音をぶつけ合う
- 無事に発表会を終えられたのは、チームワークの賜物でしょうか?
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尾見: そうですね、イムズ開発推進室は少人数体制の“全員野球”でプロジェクトにあたっています。小林も加入直後からチームに溶けこんで、今ではすっかり中心人物です。
小林: 普段から気軽に意見を出し合う仲ですが、糸島(福岡県西部のリゾート観光地)でのワーケーションが一つの転機でした。あれで、みんなの距離がグッと縮まった。
尾見: あのときはプロジェクトを通じて我々が何を目指すのか、議論がヒートアップしましたね。みな真剣そのもので、熱い思いがぶつかり合っていました。そういう場面で頼りになるのが、キャリア採用で入社した小林の視点なんです。私のように社歴が長くなると、どうしても「三菱地所らしさ」にとらわれがちなので。
小林: 私以外のプロジェクトメンバーは新卒入社組ですが、加入当初からウェルカムな雰囲気がありました。結束力が強いのは、メンバーに地元出身者が少ないことも関係しているのかもしれません。みんな右も左もわからない状態だったから、それぞれでカバーし合う関係性が築かれていきました。
- 業務を進める上で意識していることはありますか?
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小林: 自分自身が一住民として当事者意識を持つことですかね。「地元の方はあまり明太子を食べない」とか「やわやわのうどんがソウルフード」とか、思い描いていた福岡のイメージと実際の福岡は結構違うことがあるんですよね。だから、リアルな文化を通じて得られた気づきや思ったことを大事にするようにしています。
尾見: 福岡のデベロッパー同士の交流も盛んですよ。お互いビジネスでは競合関係にありますが、福岡・天神のまちづくりをともに担う仲間として、まちの将来について語り合っています。
CHAPTER 004
地域に寄り添い天神の未来を描く、新たなランドマークを

- 天神のまちづくりでとくに注力したことを教えてください。
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尾見: 今回、デベロッパー主導の再開発によって、まちの文化が一度リセットされることになります。しかし、地域の方々とまちの関係が途絶えるわけではありません。そのことを地域の方々に伝えるためにも「自分の居場所だ」と思えるようなまちづくりを意識しました。
小林: 地域の方も天神で働く方も、誰もが能動的にこのまちで過ごし、活動したくなるための“関わりしろ”をつくることが一つのテーマなんですよね。だから、工事期間中でも地域の方々が天神エリアを身近に感じてくれるよう、イムズ跡地に隣接する「きらめき通り」で施策も展開しています。
尾見: 先日は、きらめき通りの道路上でレコードショップを展開する「天神一丁目 BLOCK PARTY」を実施しました。有志を募ったところ、続々とレコードショップやキッチンカーの出店が集まって。多くの地域の方にも参加いただくことができました。こうした取り組みや業務を通じて、まちづくりの仲間が増えていくのが素直に嬉しくて、当社のスローガンに通じるものを感じています。
小林: 道路という公共空間を活用したことで、まち全体の取り組みにできたことは大きかったです。そのほか、天神エリアでよりよく過ごしていただくための実証実験として近隣の公園にテーブルと椅子を設置したり、使われなくなった売店を図書館的に再利用したりする取り組みも。
尾見: まちづくりはビジネスとしての「効果」が定量化しにくいので、どこまでコストをかけるべきなのか判断が難しいところもあります。しかし、スモールスタートでもいいからとにかく動くことが大切。イムズ開発推進室内の若手社員が中心になってアイデアを出し、社外の人たちを巻き込んでいけば、これまでのように想定以上の反響がいただけるはずです。
- 新しいビルのどこに注目してほしいですか?
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尾見: なんといっても、特長的な外観ですよね。CLT(Cross Laminated Timber/直交集成板)という木材のパネルをあしらった外観デザインは、当社でも類を見ない大胆なデザインです。
小林: 外観でいうなら、低層部に設えたV字の柱も目を引きます。通常の柱に比べてシンボリックだし、柱が建物の内側に食い込むことで地上部に広場が生まれます。ビル低層部は緑が“盛り盛り”なので、歩くときっと気持ちがいい。
尾見: あとは、アジアで2拠点目、九州初進出の「エースホテル」も目玉の一つ。米国シアトル発のホテルブランドですが、このホテルの大きな特徴は、地域との調和や地域コミュニティの醸成を図っていること。開業後は、ホテルの象徴ともいえる1階のロビーラウンジで、誰もが参加できる文化プログラムなどを開いていく予定です。
小林: エースホテルのラウンジや緑豊かな地上広場など、天神を訪れる方も天神ビッグバンにより新たに生まれるオフィスで働く方も、その日の気分に応じて使い倒してほしいですね。
尾見: 今回のプロジェクトは建物一棟だけの開発なんですが、小林を始め、メンバーの視界はすでにその枠を超えているように思います。過去の資料を紐解くと、40年前のイムズの開発メンバーや、我々の前任だった担当者の熱量もありありと伝わってくるんです。そうした思いがたくさん詰まった(仮称)天神1-7計画、そして天神のまちづくりの行く末にも注目してほしいですね。
